全国里親会問題 研究補助金交付の決定プロセスが不明
前回は、天下り団体としての全国里親会と里親促進事業について書いた。今回は、里親促進事業が調査研究事業に変化して、補助金がひねり出された経緯を調べた。しかし、結果的に、全国里親会に研究補助金が支給されることになったいきさつはわからなかった。
厚生労働省のインターネットサイトで検索すると、各里親会の全国センターとしての全国里親会と調査研究に関する記述が初めて出てくるのは、平成24年1月16日に開かれた厚生労働省の社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会の配布資料(資料3-3 里親支援の充実について)のようである。里親会の役割と活動の充実についてのページには、以下のように記されている。http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000202we-att/2r985200000202xv.pdf
全国里親会の里親支援促進調査研究事業
・里親の養育技術の向上、里親支援、里親委託推進方策の向上のため、厚生労働省からの補助金により全国里親会で実施(平成24年度新規事業)
・全国の里親会や里親支援機関等を対象に調査を行い、里親からの相談事例、里子からの意見、児童相談所、里親支援機関等関係者からの情報等を基に、好事例集、困難事例集、マニュアル、里親研修資料を作成し、里親支援機関や児童相談所に提供
・「里親委託等推進委員会」(学識経験者、里親会、関係機関等)を置く。
・里親支援機関のいわば全国センター的な役割を目指す
同じページには、全国里親会が里親会のピラミッドの頂点に位置された図も表示されている。
全国里親会
(全国センター的な役割)
↑
都道府県市里親会
(里親支援機関)
↑
地区里親会
(里親支援機関又はその支部)
なお、1月16日当日の議事録には、当時の厚生労働省家庭福祉課長の「公益財団法人全国里親会におきまして調査・研究事業を行う。里親支援機関の支援ということであります」という発言が記録されている。検討プロセスの説明がなく、決定事項の報告である。http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002226q.html
3月にも委員会は開かれており、そこでは、課長が「里親支援の体制の充実方策について」の資料を説明するくだりで「全国レベルの推進委員会を置くという点について記載しています。このガイドラインにつきましては、指針ワーキングの中の里親ファミリーホームワーキングで1月2月にご議論いただいたものでございます」と発言している。事業が決定したすぐ後に、なんらかの議論がされたようであるが、内容は不明である。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002igjl.html
社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会の資料一覧
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126712
このように平成24年1月には、全国センターとしての位置付けや調査研究と補助金交付が決まっていたと考えられるが、全国里親会が全国センターに位置付けられるまでの議論や検討、特定の団体に調査研究を委託し続けることの是非について、社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会で検討された跡は資料を見る限りない。1月16日の委員会のすぐ後(1月、2月)に開催されたらしい里親ファミリーフォームワーキングの資料もみつけることができなかった。
さらに、同じ時期に社会的養護が検討された場に「児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会」があり、平成23年1月~7月に開催されている。しかし、資料をみる限り、全国センター及び調査研究に関する議論と検討は見られない。
検討委員会に関する資料一覧
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-koyou.html?tid=129078
「児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会」と「社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会」の関係はこちら
「児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会・
社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会とりまとめ」はこちら
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/08.pdf
一方、平成23年3月に定められたものに里親委託ガイドラインがある。平成23年3月30日付けの里親委託ガイドラインには全国センターとしての全国里親会や調査研究に関する記述はないが、平成24年3月29日付の里親委託ガイドライン一部改正で、その部分が加筆されている。平成24年1月16日の社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会での発表を受けて、加筆されたと考えるのが自然だ。1つの特定の団体名が調査研究をする組織として特別にガイドラインに盛り込まれた経緯が不透明である。
23年3月の里親委託ガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018ibz.pdf
24年3月の里親委託ガイドライン一部改正新旧対照表
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000026rqp-att/2r98520000026s5w.pdf
天下り団体が里親会の頂点に立ち、研究補助金がよどみなく流れることになった不思議
どのような議論や検討の結果、天下り団体の全国里親会が各里親会の全国センターになることに至ったのか、それは各里親会の承諾を得たものだったのか、調査研究事業が決定されるプロセスはどのようなものだったのか、資料からは全く見えてこない。一体誰がどう決めたのか?
また、全国里親会による調査研究が里親委託ガイドラインに盛り込まれることで、研究補助金がとぎれなく、天下り団体に流れるしくみになっていることが不可解である。
以下のリンクの冒頭に名前が記載されている方々は、平成24年1月16日 第13回社会保障審議会社会的養護専門委員会の出席者であり、いきさつを知っている可能性がある。http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002226q.html
平成23年12月12日付社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会委員名簿はこちら
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000202we-att/2r98520000020ap9.pdf
名前が記載されている厚生労働省の人たち(肩書きは当時のもの)は当然、補助金の交付に関わった方々であり、いきさつを納税者に説明するべきである。なお、委員に全国里親会の前理事長の名前もあり、一連の不祥事を説明する立場にあるが、納税者に対して何の説明もしていない。